窓から入る夕日が廊下をオレンジに染める。
いつもならこんなシーンを目の前に大人しくしている私ではないのに、今の私はデジカメを出す事すら忘れていた。
なんだか心がやけに穏やかだった。
私は真っ白な頭でボーッとしながら教室に入った。
すると私の足を止める光景がそこにあった。
1人の男子生徒がイスに座って机に顔を伏せている。
放課後のこんな時間に誰かが教室に居るだなんて考えもしなかった私は、不覚にもドキリとしてしまった。
けれど私の動きを止めたのは、誰も居ないと思っていた教室に人が居たからという、それだけの理由ではなかった。
あの席、あの後ろ姿。
そこに居るのは空人だった。
私は無意識に息を飲んだ。
今が良いタイミングなのかもしれない。
ここには私達2人しか居ない。
これ以上、変な期待を持たせたままでいる事は、空人に対して失礼だと思う。
私は意を決して空人に近付いた。