日は落ち、一人座敷に引かれた布団の上に正座をし、そっとあの人のことを思い出す。
普段閉められている縁側の戸は開けられ、様々な顔を持つ月は欠けることなく夜空に鈍く輝いている。

昼に絶やすことなく輝く太陽。

夜に満ちることなく輝く月。


俗説では、人々は日の中で亡くなると太陽に、宵闇の中で亡くなると月へ魂が帰ると言われている。

母上は太陽へ、父上と貴方は月へとその姿を変えていってしまった。


「吉良<キラ>……」


先日の戦で命を落とした愛しい人の名を零すと僅かに胸の隅が痛んだ気がした。


「貴方に嫁ぐことを夢見た私をお許しください」



そして貴方以外に嫁ぐ私を。


文机に近付いて引き出しを引くと、そこには彼が私の側近になった時に送った上等な黒塗りの小太刀が大事に閉まってある。


「いつでも私が姫様をお守り致します」


いつだって傍にいてくれたのも


「私の前では、感情を無くさないで下さい」


笑うことを教えてくれたのも




「くくっ、姫様のお転婆には驚かされます」



他でもない貴方だった。