「…違う、あたしは…大和が好きだから、言ったの…」

「え?」

「好き…好きなの、大和。
 ずっとずっと昔から、好きだった」


 全部全部、大和の為だった。

 スカートが平均より長いのは

 大和が短いの嫌いって言ったから。

 服が白ばっかなのも大和が似合うって言ったから。

 シャンプーだって、大和の好きなメーカー使ってる。

 料理上手な人が好きだから、不器用だけど一生懸命練習した。

 全部…大和の為だったのに。


「……俺は、円香のこと…幼なじみとしか、見てないよ」

「…っ、わかってた…。
 わかってた、よ……」


 それでも…もしかしたら、って思ったんだ。

 恋愛対象としか見てなかったのは、あたしだけ。


「ごめん、な…」

「いいの…わかってたから」


 ぽん、と肩を叩いた。

 前に進まなきゃ…。

 大和は前向きな子が好きだから。

 好かれなくっても…嫌われたくない。

 先に歩き出した。

 男は大和だけじゃない。

 わかってる…でも、

 あたしには大和だけだった。


「…っく……ぅ」


 大和、すきすきすき。

 言葉にした何倍も、何十倍も、何百倍も…あなたが好き。

 あたしの世界にはあなたが溢れすぎて…前が、見えないよ…。

 立ち止まって大きな桜の木を見上げる。

 この桜並木、数えきれないくらい2人で通った。

 それももう今日で終わり。

 大和……大和、


「……す、き…っ」