「ほらよ」

「わっ!」


そんなことを考えていると
横からあの翔の声が聞こえてきて
キレイにラッピング入りされた小さな紙袋がとつぜん目の前に飛び出してきた。

ビックリされたわたしはあわててそれを受け取る。


「…ほ、ほんとに自分の分も買ったの?」

「レジんとこ持ってくのすげーハズかったけどな」


ガサッと持っていた袋を開け、中身を取り出す。

すると翔の手には
わたしが選んだのと同じ、色違いのマグカップが……


「―――!」


わ、わ…

嬉しい。おんなじだ。


翔と、おそろいだぁ…



「あ、ありがとう!」

「大事にしろよな」

「うん!あ、なくなさないよう今カバン入れとく」


アタフタと、慣れない手つきで袋づめされたマグカップをカバンの奥へせっせとしまい込みながら

前にいた翔はどこかソワソワと、不自然に自分の髪をさわりながら口を開いた。


「加奈子」

「ん?」

「このあと東京帰ったらどうする?」


何気ない翔の問いにも、わたしはカバンの中を深く覗き込んだまま聞きかえす。


「どうするって?」

「俺んち…来る?」


その言葉に、カップをしまう手が止まった。