「直哉たち、さっきから話してっとこワリーんだけど。
もう時間過ぎてっし、そろそろ出発しねーと…」


――そのことを思い、ひたすら涙していると

しばらくして、様子を見守っていた勇樹くんたちがゾロゾロとこっちへ集まってきた。



“皆ほんとにごめん…、
でも今はちょっと、一人になりたい……”



翔との件があってすぐ
明らか表情の暗いわたしの心情を察してか、
その時は皆あえて何も聞かず、ただソッとしておいてくれたものの

さすがに今はそろそろこの場所を出ないといけないらしく、

この班のリーダーでもある勇樹くんがしきりにケータイを取り出しては時間を気にしてる。


「あー…うん。
俺はもう大丈夫。だけど加奈子ちゃんが……」

「あっ!わ、わたしも!もう大丈夫だから!」


そう答えてすぐ
わたしは頬に残っていた涙のあとを拭きとると
勢いよくベンチからスクッと立ち上がる。


でもその様子がどこかムリをしているように映ったのか
あさみちゃんが心配そうな眼差しを向けてきた。


「加奈子だいじょうぶ…?つらかったらほんと、ムリしなくていいんだよ?」

「ううん。ムリしてないよ。ほんとに平気!
それより、心配ばっかかけてごめんなさい!」



さっきまで泣き腫らしていた目は隠せないものの

それでもさっきまでとは打って変わり、明らか表情のスッキリした様子のわたしを見て

皆ようやく納得してくれたのか
あさみちゃんが嬉しそうにVサインをしてみせた。



「そっか!…わかった♪
それじゃあ加奈子も無事元気になった事だし、今夜のホテル目指して出発しよっか!」