しばらくそのまま動けずにいると

突然――ガタッ、と大きな音がして、誰かが部屋にあがり込んできた。


「……」


耳元ではわたしたちのいるすぐ側を

ミシ、ミシ…、と誰かが踏みつけて歩く畳の音。


布団の隙間から
一瞬パッ!と懐中電灯の明かりがまぶしく入り込んできたかと思うと、

その後もチカチカと
丸く白い光がせわしなく通り抜けては、部屋の間を行ったりきたりしてる。



「……っ」

「……」



ドキ、ドキン…



このとき

布団の中では
今も向かい合わせに抱き合って動かない翔とわたし。


お互いの唇が離れたあとも

翔はわたしが監視の目に見つからないよう


ギュッ…と上から頭を押さえこんで、きつく抱きしめたまま…。



「……」



それから一体
どれくらいの時間が過ぎたんだろう…


ずいぶんと長い間、ひたすら息を押しころして、お互いジッと動かずに耐えていると


ようやくその足音がだんだんとわたしたちの耳元から少しずつ遠ざかっていって…



「……」



部屋を出ていく直前でピタリと、


ほんの一瞬、

誰かが一度…こちらを振り向いて止まる気配がしたのと同時に



「……」



しばらくして


ようやくピシャリ、と襖の閉まる音がした。