「遅くなったが授業を始めるぞ。全員席に座りなさい」


なんだか気まずくて
ひたすら目を押しつぶっていると

突然ガラッ!と扉の開く音がして担任の先生が教室に入ってきた。


「ちぇっ、だりー」

「また後でなー」


教壇へあがるなり
早速、テキストをめくって
授業に入ろうとする先生に

今まで楽しそうに窓際で騒いでいた男子たちも
しぶしぶ自分の席へと戻っていく。


「ちなみに今日教える範囲は今度の中間にも出すからしっかりメモを取っておくように」


(!な、何か書くもの…)



先生のチョークを叩く音と
ガタガタと椅子に座る音が響く中

わたしも慌てて横のカバンから教科書やノートを取り出すと、机の上に広げる。


そのままガサゴソとペン入れを探していたとき

ふ…と、視界のはしに
白い包帯越しの手が、わたしの教科書の真上に乗っかり、止まっているのが見えた。