「愁哉、明日空けといてね」


コーヒーを持つ指先の長さが優雅で、上品で、男の癖に恨めしい。


「明日?社長も同席か?」

愁哉は、眼鏡の奥の理知的な瞳を細める。勘のいい男。

その癖、自分の事となると苛つくくらい鈍感。


「そうよ、大事な取引きだから、宜しくね。それと、今夜は付き合いなさい」


「…全く、君はいつも急だな」


愁哉は不機嫌に眉を潜める。


「スケジュール通りの日常なんかつまらないでしょ」


あたしはニッコリ笑って、目の前の秀麗な顔をした男を眺めた。