最後まで、
ショウは涙を見せなかった。
出会った日に言った
「オレには、
このタオルはもう必要ないから」
って言葉が頭をかすめる。
「そのあと、
オレはここに引っ越してきた。
ここに住めば、
自分を許すなんて甘い考えは
浮かばなくなると思ったから。
でも、あの日…、
紗奈を見つけた日、
気づいたんだ」
ショウの声が大きくなる。
「オレは、間違ってた。
そんな思いは、
ただのわがままなんだよ。
結局、オレは
『辛い過去を背負った人間なんだ』
って、
自分を慰めたかっただけなんだよ。
彼女にすがって
生きていきたかっただけなんだ…。
彼女の思い出に守られて…」
この瞬間、
胸の奥が切り刻まれた気がした。
「達也にすがって
生きていたいだけ」
。