私の名前は阪本鈴音。
私に似合わない“鈴音”なんてかわいい名前をつけてくれた人は、もうこの世にいない。
「はぁ」
ため息をつくと幸せが逃げるってあいつに言われたことがあった。
もう私に幸せなんて残っていない。
だから、思う存分ため息をつく。
「はぁぁ」
家になんて帰りたくない。
放置自転車で溢れた駅前の広場。
もう止まってしまった噴水の横のベンチに座る。
イライラする水商売の女の笑い声。
スケボーの練習をしているガキ。
寂しそうに座っているおじいさん。
そして、ただ涙を流す私。
夜の街は、居場所がたくさんある。
みんながどこか寂しさを抱えているようだった。

