―優しいいじわる― 作戦まであと2日と迫った木曜日の夜。 10時半。 私はドーナツ屋さんでドーナツを2つ買った。 そして、あの場所へ向かう。 奏が『鈴音の居場所』と言ってくれたマンホールの上。 音が聞こえない。 またいないのかと思った時だった。 ギターを抱えたまま、丸くなって目を閉じていた。 「眠ってんの?」 起こさない程度の小さな声で呼びかけてみる。 「ねぇ、拓登・・・・・・」