地面に座り、ジャージのズボンをはく。
あぐらをかいて、手で顔を隠して泣いた。
酔っ払いのオヤジの笑い声が遠くから聞こえる。
風に吹かれて飛んできた空き缶が、虚しく音を立てる。
あの空き缶みたいに
風に身を任せれば、私はどこかへ辿り着けるのだろうか。
路地のずっと奥にある信号が、青になり黄色になり赤になる。
そして、また青になる。
ひとつの信号機が定期的に色を変える姿をこんなに見たことはない。
誰も通行人がいないのに、信号機は色を変え続ける。
それが信号機の仕事だから。
そんな風にあきらめることができたなら……
私は、あの家で苦痛に耐えながら暮らしていくことが仕事。
そう割り切ることができたなら、少しは楽になれるだろう。

