「暇してんだったら、カラオケ行かない?」
早速声をかけて来たのは、全身黒のスーツを着た男の人。
その後ろに隠れている男の人はちょっとだけタイプだった。
「暇じゃないから」
1度断って、すんなり引き下がるような気弱な人じゃない。
きっとまた声をかけてくる。
「あっそ~!じゃあ、いらね」
え?
あっそ。
すんなり引き下がるんだ。
別に遊び相手を探していたわけじゃないけど、今夜は家には帰りたくない。
どうしてかと言うと……
お父さんの大事な人、佳世さんの誕生日だから。
用事があるから遅くなると言った。
それをお父さんは「お前はひどい」と言ったけど、それが何よりのプレゼントなのに。
佳世さんにとっては、邪魔者の私がいない夜が嬉しい。
遅くなるからってのは、『ヤッてていいよ』って意味。
佳世さんはそれをちゃんとわかってる女。