綾は、制服のリボンを外し、クルクルと丸めて机の中に入れた。
放課後仕様の綾。
スカートの下にはいているジャージを脱ぎ、ブラウスのボタンをふたつ開ける。
鞄の奥底から出てきたミストを髪に振り掛ける。
窓からの風に乗り、教室は甘い香りに包まれる。
シトラスの香り。
いつも頼んでもいないのに、綾は私の髪にもそのミストをかけてくれる。
痛んだ髪を心配してくれる綾は、頼りがいのあるお姉ちゃんのようだった。
「じゃ、出動~!!」
「ラジャ!」
家に帰りたくない私達は、毎日のように街へと出かけた。
買い物をするお金も持っていない。
ただブラブラと服や雑貨を見る。
いつも立ち寄る雑貨屋さんのお試し用の化粧品がお気に入り。
店員もあきらめ顔で、私達から視線を外す。
ラメ入りのマニキュアを塗る。
「乾くのおっそ~!」
「あ~!!触ったからはげたじゃん」
マニキュアに、マスカラ、アイシャドー。
学校用メイクから夜遊び用メイクへと変身。
この格好で暇そうに立っていると99%の確立で声をかけられる。
私と綾は、どこにでもいる軽そうな女子高生だった。