今まで、甘えることができなかった。 誰にも。 お母さんがいなかった。 晩御飯に、何が食べたいなんて言ったこともない。 別に鮭のムニエルでいいのに、わがままを言って、困らせたかった。 その日の夕食には、肉が出た。 佳世さんは、私と似たところがあって、不器用で照れ屋だった。 最近は、佳世さんのささいな優しさを発見して、ニヤっと笑うことが増えた。