私はあの場所へ向かっていた。



何ヶ月も避けていたあの「私たちの居場所」へ。





「いるはずないよ」


独り言なんて言ってみたりして。





懐かしい場所は、あの時のまま時間が止まったままだった。





「ちゃんと捨てろっつーの」



拓登の缶コーヒーを拾う。




え。


嘘でしょ。





何ヶ月も前から置きっぱなしだったはずの缶コーヒーなのに、ほのかに温かかった。






「拓登!?」





私は、無我夢中で走り出した。



その缶コーヒーが、拓登のものだと決まったわけじゃないのに。







缶コーヒーをゴミ箱に投げ入れ、ただ走った。





まだ近くにいるのなら。


拓登もこの場所にまだ来てくれているのなら。





もしも拓登がまだ私のことを必要としてくれているのなら。





もう一度チャンスをください。