―あの場所―





綾は、キラキラした涙を浮かべながら私に手を振った。



今までの誤解や、いろんな出来事を今からゆっくり話すんだろうな。





私は、ゆっくりと歩いた。


ただただ歩く。


行くあてもない。



学校に戻る気分でもない。





私は、いつも誰かをうらやましいと思う。



何かが自分には足りないと思う。



それが何なのか、わかりそうでわからない。




でも、拓登と一緒にいたあの日々は、私は満たされていた気もする。





誰かを愛している自分は、嫌いじゃない。



辛くても、誰かを愛することで、心の穴が埋まっていた。







綾がお母さんと仲直りできた。




そのことが嬉しいはずなのに、「嬉しい」よりも「うらやましい」と思ってしまう。




綾だって、決して幸せではないのに。