「佳世さんと結婚すれば?」



私は、テーブルの上に置いてあった食パンをかじりながら言った。



もうどうでも良かった。


お父さんから愛されているとわかった私は、もう佳世さんとのことを反対しようとは思わなかった。




「いきなり何を言ってるんだよ」




驚いた顔のお父さんと、にっこり笑った拓登。



「えらいな、鈴音」


拓登は、私の肩に手を乗せた。



「別に」






3人で朝食を食べた。



涙が出てきそうだから、憎たらしい言葉ばかり口から出る。


嬉しくてたまらなかった。




“家族”って感じがした。


こういう朝食は、もう何年も経験したことがなかった。





「いいな、こういうの」



私が思っていたことを拓登が言った。



「拓登んちは、毎日豪華な食事じゃないの?」



拓登は、苦笑いを浮かべてから首を振った。



「別に豪華な食事がしたいわけじゃない。こういうほのぼのとした食事ってしたことがないから。俺は子供の頃から食事中は緊張していたからな」




私とは違う“寂しさ”をずっと抱えていたんだね。



ひとりで食べる朝食も寂しいけど、緊張する朝食なんてもっと嫌だ。