「そんなに大事な人の子供なんだ。鈴音は・・・・・・ だから、大事だし、かわいい。でも、態度に表せなかった。怖かった。お前は小さい頃から人の心の奥を見抜くのが得意でね。いつも疑ったような目で俺を見ていた。俺はいつか、鈴音に捨てられるだろうと覚悟しながら過ごしていたんだよ。だからって、お前をそんなに苦しめていいわけがないけど」
黙っていた拓登が口を開いた。
「捨てられるのが怖くて、自分が捨てたんですね」
お父さんはゆっくりと頷いた。
「今のままではいけないと、毎日思いながら生きていた。鈴音が幸せじゃないこともわかっていた。俺自身も幸せではなかった」
3人が同時にお茶を飲んだ。
ゴクンと喉を通る音が響く。

