一番嫌だったこと。
それはやっぱりエッチの声だった。
私が今まで彼氏とエッチできなかったのも、きっとお父さんが原因だ。
体が繋がってしまうと、心が離れてしまう気がしていた。
ケダモノに見えた。
快楽だけを求めて、自分の娘の存在さえも忘れてしまう。
怖ろしい。
お父さんは、拓登の顔を見て、申し訳なさそうに頭を下げた。
「いいよ。拓登は全部知ってる。私は拓登に出会わなかったら、今頃死んでたかもしれない。それくらい、辛かった」
ここまで言うつもりはなかったのに。
言い始めると止まらない。
それくらい長い長い時間、私は苦しんでいたってことだと思う。

