「拓登、悲しいの?」
どう声をかけていいのかわからない。
思ったままに、聞いてみる。
「うぅ・・・・・・ う・・・・・・」
拓登は、声をあげて泣いた。
「拓登、大丈夫だよ」
「鈴音・・・・・・俺、俺・・・・・・もうどうしていいかわかんね・・・・・・」
搾り出すような声。
男の子の涙ってこんなにも綺麗なんだ。
女みたいに、計算で流したりしないもん。
純粋な綺麗な涙。
「親父のこと・・・・・・殴った。家の壁にギター投げつけて・・・・・・飛び出した」
体育座りした拓登は、ひざの上にあごを乗せて、遠くの信号を見つめた。
何も言えなかった。
私は、そっと体を寄せ、拓登の背中に手を当てた。
長い沈黙が続いた。

