ドーナツの甘い匂いがふたりを包む。 「鈴音、ずっと俺のそばにいてくれる?」 涙声の拓登。 「当たり前だよ。ずっとずっと拓登のそばにいる」 それは拓登よりも私が望んでいること。 目を真っ赤にした拓登の顔が、赤信号で真っ赤に染まる。 ギターも持たずに、ただ泣いていた拓登。 何があったんだろう。 聞くのが怖い。 私の傷なんかよりもっともっと深い傷。 私がその傷を消してあげることなんてできるのかな。 そんなに深い傷、どうやったら消せるんだろう。