―天使か悪魔か―




みんなが集まる広場じゃなく、誰も通らない路地の片隅で歌う少年。



10月の夜は、もう冬の匂いがしていた。





眉毛が隠れるほどに深くかぶった黒のニット帽。



破れたGパン。



ぼろぼろのピンクのパーカー。




スニーカーは、先週私が買ったものと同じ種類だった。





悲しい歌詞。


失恋ソングを歌う少年。





誰に向かって歌うでもなく、自分と会話するように。


静かにそっと歌う。

私の存在にも気づかずに。




歌うというよりも、ささやくという方が近いかもしれない。



そっと、ささやく。


もしくは、紡ぐ。



優しいメロディー。