―朝日―




拓登が家を出たのは、あの夜だった。


私が初めて拓登に出会った夜。



居場所がなくて、辿りついたのが拓登の甘い歌声だった。





「家出した俺の前にいきなりお前が現れた。俺よりもずっと寂しい顔したお前が・・・・・・」



「拓登が家出してなかったら、私はあの夜どうなってたんだろう」



きっと今の私はいない。



拓登がいなかったら、私はあのままどこかへ消えてしまっていたかもしれない。




「俺もお前も、このままじゃ何も変わらない。どうにかしないと」



しっかりした睡眠はほとんど取っていないのに、眠くはない。




少しずつ明るくなる空を見て、涙が出そうになる。


さよならが近付いてる。


朝が来れば、拓登と私は違う世界の人間になる。