「父親が、政治の世界の人間で・・・・・・ 俺は小さい頃から難しい本を読んだり、政治のことを勉強させられてたんだ」
「うっそ!!お父さん、政治家なの?」
急に、拓登が遠い世界の人に思えてくる。
きっと拓登の家は、お城みたいにでっかいんだ。
「名もない政治家だけどさ。俺が音楽をやってることが許せないらしい。家出の原因はそれだけじゃないけど。俺は、お前に比べて恵まれてるのにな。弱いよな」
ドラマとかで見たことがある。
医者とか社長の息子が、親の仕事を継ぐ為に自分の夢を犠牲にする、みたいな。
拓登は、親から期待とか重圧から逃れたかったんだ。
「わかるような気がする」
「そう?鈴音と比べると俺の悩みなんてちっぽけじゃん?」
「そんなことないよ。私は自由だもん。親に決められた道を生きていくって、それはそれで大変だよ。私は絶対無理」
拓登は、ふふって笑ってから夜空を見上げた。
私も真似して見上げようとすると、拓登の手が私の頭を押さえた。
だから私は拓登の肩に頭を乗せて、目を閉じた。