「冴木?」 ああ、部長だ。 低すぎない優しい声。 眼鏡の奥に覗く理知的な瞳。 狂いのない端正な顔立ちを僅かに驚かせて、彼はあたしの名を呼ぶ。 多分 何も考えず、やっと会えた、それだけで彼に抱きついた。 「…どうした?」 バタンと扉が閉まって、 引き返せない、 引き返さない。 覚悟を決める。