「ええ、例えばの話ですわよ」 琴音さんは全く動じた様子も見せずまた柔らかく笑った。育ちの良さを感じさせる笑み。それは身に付いたもので、溜め息が出る位嫌みがない。 年齢なんて関係ない。 今、この時点であたしはこの人よりコドモだ。 棘が刺さる。 「女性の存在中心に男性を見るつもりはありませんわ。それこそ、面倒くさいでしょう」 細く鋭い棘が 「そんな事どうだっていいですもの」 彼女は静かに言った。それでいて本心で、何もない空虚な、声。 あたしは深い棘が刺さったみたいに、体が冷えた。