俺はキュッと青色のネクタイをしめた。

「ぐぇ」

ネクタイなんか、初めてだったから。

制服が届いたとき、父さんと何回も練習した。
 そのとき、父さんが一粒涙を流して

「和泉にこれを教えられて、嬉しい」

って言った。





俺まで泣きたくなった。

 ようやく、父さんたちと会わないって決めたのに、決心が緩みそうになった。

入学したくないって、いいたくなった。


「っし…。父さん、母さん!いくよ~~」

もしかしたら、最後かもしれない。




父さんたちと会うのは、今日で最後かもしれない。
 俺は、夏休みも、冬休みも



家に戻らない気でいる


涙花に会いたくないし


 一度戻ってしまったら

ずっと家にいたくなるような気がしていた。




「おっ。かっこいいじゃないか」

洗面所から出てきた父さん。

「ッギャァァ!」

後ろから髪をグチャグチャにする母さん。


…最後かもしれない。