『涙花ちゃん、宇野さんから電話です』

「つないでください」

『2番です』


『もしもし、涙ちゃん?』

「ハイ、貴由?」

『うん』

いつもおっとりした小雪の声が、今日は違ってせかせかしてる。

『どうだったの?』

「びっくりしたんだけど!15番で合格」

『ウソでしょ?!涙ちゃんが?すっごぉい』

「そのうちお父さんから聞けるでしょ」

貴由のお父さんは、内科医で、桜ヶ丘の健康診断のときに、みに来てくれているそうだ。

もちろん、男子だけど。

だから、こういった事は、お父さんもときどきうわさで聞くんだって。

『でも、本当びっくり。まさか、涙ちゃんが15位なんて。やっぱり、親の血を継いでるね』

「まさか」

私の親は有名な弁護士。ママは通訳の仕事についていて、何ヶ国語も話せる。
私も、賢いはずなんだけど…

「…貴由は?」

『そのまま上へ行こうと思うの。ほら、私親も西川出身でしょ?医学部は桜ヶ丘より良いみたいだし…。
 涙ちゃんはもう大丈夫だね。都も雅も増田君までついてるんだもん…」