直樹は真剣な顔をして俺を見た。
「親が決めた相手だよ。あの子は嫌がってたらしいんだけど、許されなかったみたいで」
だから、と直樹はまた帽子をかぶった。
「カイの出番だろ」
黙って直樹を見つめた。
俺の出番?
「……俺には何をする権利もないよ」
美夜を何も言えずに置いてきてしまった俺に
一体何ができるっていうんだよ。
直樹はしびれを切らしたように顔をしかめた。
「お前ばか?好きなんだろ」
「……何言ってんの」
好きだよ。
あの綿飴笑顔も、優しい言葉も、柔らかい小さな体も。
腕の中に閉じ込めて離したくないくらい
愛しい。



