「どうしてそれを?」



美夜がいなくなったこと、七海にだって言っていないのに。



「あの子、たいそうなお嬢様だったんだな。月山の家に入っていくところを見たよ」



直樹から視線を外して、波に目をやった。


相変わらず海に写る月はゆらゆらと波に揺らめいている。



「あの家のことは有名だから知ってるよ。お嬢様が一人で暮らしたくて家を出ていってたのも。でも婚約者がいるせいで連れ戻されちゃったんだな」



俺は直樹の言葉にぴくりと反応して、さっと直樹に顔を向けた。



「今、なんて……」