時計の針が12時を指すころ、美夜の目がとろんとしてきた。
俺は黙って席を立つと、眠そうな美夜を抱き上げた。
美夜は驚いた顔で俺を見上げる。
構わず、驚いた顔のままの美夜をそっとベッドに寝かせた。
「おやすみ」
そう言って窓から出ようとすると、美夜が慌てて俺の服の裾を掴んだ。
「待って」
美夜はせっかく寝かせたのにベッドから降りて、化粧台の引き出しを開けると何やら取り出してきた。
取ってきたものを、コロンと俺の手に転がす。
指輪、だった。
「今夜のお礼。……明日もきてくれる?」
俺が驚いていると、美夜が心配そうに顔を覗き込んできた。
俺はふっと微笑んでみせた。
しょうがないなぁ。
「じゃあ、美夜。また明日」
そう言って窓に足をかけ、振り返った。
美夜は安堵して表情を緩めている。
「おやすみなさい、カイ」
俺は彼女の言葉を聞いてから、夜の闇に飛び込んだ。



