「あ。雨だー」
お気に入りの傘をバンッって開いてくるくると回す。
「・・・」
「もしかして。猛、傘無いのー?」
放課後いつもみたいに猛と帰ろうとしたら、天気予報通り雨がちらつき始めていた。
「・・・」
雨が降れば、私と猛の距離を縮める。
「じゃあ俺雨宿りしてくから、先帰れば?」
・・・はずなのに、相変わらずにドライな猛。
「もう!素直に傘に入れて?って言えないのー!?」
「けっ」
相変わらずに素直じゃない猛。
「ほらぁ、入って?」
「いいって。お前一人で帰ろって」
頑なに昇降口から出ようとしない猛。
「なんでよ?早く!」
「いい、二人で入ったらお前が濡れるだろ」
ふいっと顔を背けた猛は、不器用だけどすごく優しい。
・・・
もうー!なんで猛ってたまにそんな胸キュンな事言うのかな?
「大丈夫だか「猛くぅぅん!!」
“大丈夫だから帰ろう?”
そう言いかけた時、ドン!!っとある団体に押され、私は雨の中に追い出された。
ザーーーっと私の体を濡らしていく雨。
ち、ちょっとぉぉ!?
ぱっと見ると、猛の姿が見えない程に猛を囲むお姉さま方。
「猛くぅん!傘ないのぉ??茉里が貸してあげるよぉ??」
「だめ!京が貸すぅ!」
「何言ってんの!?ミドリが一緒に相合傘するんだから!」
・・・っと5,6人の先輩が言い合いをしている。