疑わしいながらも、オレは好奇心が勝ってしまった。

家に帰るなり、説明書を読んだ。

【①水は一日に一度、コップ一杯与えてください。

 ②やる時は陽の当たらない場所でお願いします。

 ③植物の成長を早める為には、お客様の血を一滴、水にまぜてください。栄養となり、植物の成長に良い影響が出ます】

「…血?」

ここでさっきの男との会話を思い出した。

「花粉の心配ですが、植物にお客さんの体質を合わせれば良いのです」

「合わせる? どうやって?」

「それは説明書に書いてありますよ」

…なるほど。こういうことか。

血を水にまぜることによって、オレの花粉症体質を、花に合わせてもらうのか。

それにしても、人の血が栄養になるなんて…絶対日本産ではないな。

あの男も日本語が上手かったが、肌の色は黒かった。

それに顔の半分しか見ていないが、日本人としての顔立ちではない。

さしずめ自国の植物を売りに、出稼ぎに来た外国人か。

まあそんなヤツがいたって、不思議じゃないがな。

それに植物は日本に輸入するとき、検査を受けているだろうし。

多少妙なところがあっても、買った本人に影響がなければ良いんだ。

オレは説明書に書いていた通り、水をコップ一杯用意した。

そしてちょっとイヤだったが、針で指先を刺し、一滴の血をまぜ、植物に与えた。

今はもう深夜だ。陽が当たっていなければ、良いだろう。

オレはその日、そのまま眠った。

植物の成長のことを思い浮かべながら…。

自分がどんな恐ろしいことをしたのか、考えもしないで…。