― Summer Drop ―

もう悲鳴を上げてしまいそうだった。

えぇえぇぇっ……どうしよう……。

謙太は本を読んでいたけれど、転がってきた消しゴムを手に取った。


「あ、ありが……」

千夏が最後まで言い終わる前に

謙太は教科書の上にポンと消しゴムを置いた。

そして何事もなかったかのように、再び本に目を落とす。

受け取ろうと差し出した左手が、行き場を失い

居た堪れなくなって、机の下に隠した。