― Summer Drop ―

千夏が市立図書館に着いたときには

既に数人がガラス製の自動ドアの前で、開館を待っていた。

十時になり、大きな窓に面した二人用の席に座る。

三日後に終業式を控え、張り切って図書館に来たものの

受験勉強として何をしたらよいのか分からなかった。

とりあえず、夏休みの宿題として出された数学のワークに取り掛かるけれど

苦手教科だということもありはかどらない。

早速集中力が途切れ、そっと回りを見渡すと

自習用の席は大方埋まっているようだった。