"ピピッ…ピピピピッ"

けたたましく鳴る目覚まし時計の音で目を覚ました。

蒸し暑い室内と嫌な汗
おまけに蝉までないて

夏真っ盛りである

ふと机の上を見ると
昨日徹夜でやろうと思っていた、定期テストの教材達が、大きな山を作っていた。
どうやら睡魔に負け、早々にリタイアしてしまったらしい

大きなため息をついて
寝不足の重い体を起こすと
自分の情けなさで
体が一層重くなるのを感じた。
今年受験を控えていて
勉強しなきゃいけないのは
わかっているが

なにせ
やりたいことが見つからない

焦れば焦るほど
勉強できなくなるのが
受験生の性である。



まだ開けきらない目を擦りながら、リビングへの階段を下りていると、
朝食の香りが鼻をつき
胃が食べ物を拒否するのを
感じるのであった。

リビングとキッチンを
忙しそうに行き来する母をなんとなくで目で追いながら
のそのそと席に着いた。

「あんた、昨日電気つけっぱなしで寝てたわよ。今日から期末試験だっていうのに、たるんでるんだから、まったく」

母の高い声は
寝不足気味な頭によく効く。
きーんと言うハウリングに似た音が頭に反響した。

「わかってるよ、そんなこと、それにオレの人生なんだから、オレの好きにしたっていいじゃん。母さんには関係ないだろ…」

母は一口パンをほうばると
蔑んだ目でオレを見ながら言った。

「志音ちゃんなんて、お父さんの病院継ぐために、勉強して国公立の大学受けるそうよ。お母さん喜んでたわ、あんたも志音ちゃん見習いなさいよ。」

志音というのは
オレの幼なじみで
頭も良くて運動もできて学校でもそこそこ人気があるが
どこか人と感覚の違う所があり、オカルトマニアという意味不明な奴だ。
何度黒魔術師の練習台にされたことか…

「あんなやつ見習ったら、見えないもんが見えちまいそうで、恐ろしいわ」

想像するだけで
心底ゾッとする。

母は呆れたように溜息を着くと、コーヒーを持って席を立った。

そんな後ろ姿を見ながら
オレもいつもより少しばかり早く学校へ行こうかと、
ぼんやり考えていた。

少しでも勉強の遅れを取り戻すように、