新羅は、「あいつ」って言う時、少し顔を赤らめた。


すぐに頭に浮かんだのは、今朝、新羅の机に肘をついていた男子。


私と新羅を冷やかしていた…確か、「長田」とか言う子。



私の勘通り、新羅の口から彼の名前が出た。


「おさくん…って言うんです。私が教室で泣いてるのを見て、電話をしてきてくれて、それから毎日真剣に先輩とのこと相談に乗ってくれてたんですよ。おさくんがいなかったら、私は今も、先輩に素直になれないままだったと思う。」


昼休みの菜美と涼介を思い出す。


辛い時、支えてくれる誰かが、恋の相手になることもあるんだ。



「新羅…ごめんね、苦しめてほんとにごめん…」



新羅の肩を抱いて、泣き出す私に、新羅は私の倍以上の涙で答えてくれた。