その日の夜。

晩御飯を食べた後、新羅の家へ向かった。



会ってくれないだろうと思いながらも、じっとしてはいられなかった。



クラブジャージのまま、帽子を被り、何も持たずに走った。


自動販売機で水を買って、それを一口だけ飲んでポケットに入れた。



空には、灰色の雲が細長く連なっていた。


月の場所はわかるのに、月の姿は見えなかった。





「話って何ですか?」


呼び出した公園に、新羅はすぐに来てくれた。


座ったベンチのお尻がひんやりとした。




「ごめんなさい…」


さっきまで走っていたせいで、私の声は上ずっていた。


泣いていると思ったかもしれない。



一瞬、新羅が私を見た気がした。



「先輩にとって私は何ですか?」


新羅の声は、迷いがなく、一直線に私の心に届いた。


その声の力に私も答えなくてはいけない。