「沢渡!!悪ぃ、これ教官室持っていっててくれる?」


ガヤガヤとした廊下を友達と話しながら歩く私に…

新垣先生が声をかけた。


これも、陸上部の特権?



新垣先生は、


私の恋が動き出したことにも気付かずに

無邪気に私に話しかける。



そのたびに


私の胸は


おかしくなりそうだよ。



知らないでしょ。



新垣先生に話しかけられると

苦しいんだよ。



でもその100倍嬉しくて…




新垣先生に頭を撫でられたりしたら


私は食欲がなくなるんだから…





新記録を出せた日の後片付けの時だった。



タオルで汗を拭きながら、ハードルを片付ける私に新垣先生が近付いた。



「沢渡!おめでとう!この調子だぞ!!よしよし…」


汗まみれの私の頭に手を乗せて、撫でてくれた。

時が止まったような感覚だった。


薄暗い校庭で、汚れた自分の手をじっと見つめながら動くことができなかった。




その日は、夕食がのどを通らなかったんだから…