「見つかってよかったよかった」

うんうん、と頷いている夕月さんを見て、
ふと 不思議に思った。


バスの行き先はたくさんあるはずなのに、
どうして夕月さんは私の居場所がわかったんだろう?


すると、夕月さんがまるで私の気持ちを読んだかのように話し始めた。


「実は俺も最初、迷っちゃったんだよね」

「嘘!」


なんだか恥ずかしそうに話す夕月さんは、
全然嘘をついているようには見えなかった。


「なんとかなるだろーって思ってバスに乗ったんだけど、なんとかならなかったんだ、それが」


夕月さんはくすっと笑ってマグカップを握りしめた。


「私と同じだ」


「で、たどり着いたのが」


そういってちらりと私を見る。


「ビィとおんなじとこ」

「ええ!?」


つまり…夕月さんもあの辺境の地にひとりで立っていたことがあったわけだ。


それで。


それで、私もあそこじゃないかって思ったんだ。