え……
腕を掴まれてもなお部屋に逃げようとしていた私は、思わず足を止めてしまった。
「今、なんて……」
美緒って……
夕月さんの方に顔を向けると、夕月さんは真剣な顔をしていた。
「わっ」
急に腕を引っ張られて、気づくと夕月さんの腕の中にいた。
「……え」
ぱくぱくと口を動かすだけで、体は動かせないで固まっていた。
なんで
なんで
私はこんなことに?
「あの、」
離れようと身じろぎするとさらに腕に力をこめられた。
「帰すなんて言ってない」
耳元で囁かれてかぁっと顔が熱くなった。
心臓がドキドキいってる。
苦しいくらいに。
「名前で呼んだりしたら歯止めがきかなくなる気がして、呼ばないようにしてた……でももうどうせ、無理みたいだ」
何
何が起こってるの……
「美緒」
夕月さんはもう一度私の名前を呼んだ。
彼の口から愛しげに自分の名前が紡がれるのが信じられなくて、泣きそうになる。
「夕月さん…」
そう言うのが精一杯で、夕月さんを見上げると優しく微笑まれた。



