「俺には当たり前じゃなかった。胸があったかくなったよ。だからビィにもいつか俺が作って待っててあげたいって思ってさ」
そう柔らかく微笑む夕月さん。
そっか…
だから練習してくれてたんだね。
いつか私に作ってくれるために。
「でも同時にビィが家族といる場所を俺が奪ってしまったんだって気づいた。だから早く家に帰してあげないとって思った」
赤くなった頬からサッと血の気が引くのがわかった。
まさかもう、お別れだなんて言わないよね。
まだ時間はあるのに。
夏休みは終わらないのに。
最後に料理作って、念願を叶えたからって……
そんなのヒドいよ。
「嫌。私まだ、帰らないからね!」
ガタンと立ち上がり、首をブンブン振った。
「夕月さんのバカ。一人で決めちゃわないでよっ!」
うるうると滲んできた涙を見られたくなくて、サッと顔を背けると部屋に戻ろうと踵を返した。
泣き顔なんて見られたくない。
涙を引っ込めたくて早く部屋にかけこもうとしたのがまずかった。
テーブルに手がぶつかり、スープの器がカタンと揺れて思わずピクリと動きを止めてしまった。
その隙に素早く夕月さんが私の腕を掴んだ。
「美緒!」



