秘密の鎖


失礼だけど、本当に夕月さんからは信じられないくらいおいしかった。

夕月さんは料理はてんでダメなのに……


どうして?


「参った?」


夕月さんが楽しげに聞いてきて、私はちょっとむっとしながらも頷く。


「でも、何で?夕月さん料理できないはずじゃ……」


「練習したの。いつかビィに食べてもらえるように」


「え………」


練習?


私のために?


なんで?


夕月さんも少し視線を落とし、長い睫毛が姿を見せた。


「いつもビィは一緒に食べようって待っててくれた。俺がどんなに遅くなっても」


スプーンを握ったまま、口も挟めないで話に耳を傾ける。


「嬉しかった。待っててくれるなんてそんなの初めてだったから。家族揃って食べるなんて家ではめったになかったし」


「そ、そんな…。私にはこれが当たり前だったからそうしてただけで…」


顔が赤くなるのを誤魔化すように首を振った。


いつだって家ではそうしてた。


お父さんが仕事から帰ってくるのを待って、みんなでいただきますして……