「へえー、何したの?」


「だから何もないってば!」


肩に置いた手に力を入れてくるから、ぺいっと払った。

絢香は払われた手をそのまま口元に持っていき、あからさまに面白くなさそうな顔をした。


「へ~、ふ~ん、面白くねー」


面白くなくて結構!


つーん、と私がそっぽを向いている隣で、莉沙がええーっ、と絢香に抗議の声をあげた。


「なんでー?めちゃめちゃ面白いじゃん!」


莉沙は面白がりすぎ!



私はもう構わないことにして、鞄から教科書やらプリントやらを引っ張り出した。


ええと、1コマ目は……もちろん英語かぁ


ってことは、しょっぱな夕月さんか。


「ねーねー美緒。そういえば大丈夫なの?」


莉沙が私の顔を覗き込んできて、私は教科書を出す手を止めて何が?って顔をした。

莉沙はちょっとちょっと!と私の肩をパシパシ叩く。


「とぼけてる場合ー?女の子たちに何もされなかったかって聞いてるの」


「あ……」


サーッと血の気が引いて、ポトリと教科書を落としてしまった。


ああ…っ、

すっかりすっかり忘れてた!


私、そういえば夕月さんのせいで命の危険に晒されてるんだった!