秘密の鎖

「ま、料理はおいといて、俺に何か言うことはない?」


「へ?」


夕月さんの質問に顔を上げると、箸で捕まえていたそうめんがするりと逃げた。


「えーと、言ってる意味がよく……」


「わからない?」


「まぁ……」


私はそうめんがまだ入っている器に箸を突っ込んで、うつむきがちに夕月さんを見ながらくるくるとかき混ぜた。


夕月さんはにこやかに頬杖をついた。


「あやかっていうのが男だなんて、俺は聞いてなかったんだけど」


私はギクリとして箸を止めた。

汗がじわりと浮かぶ。


「ど、どうして……?」


平常心を保とうと試みるも、確実に顔はひきつってると思う。


「街で二人で歩いてるとこ見ちゃった。バイトの休憩中、窓から」


まさか、見られていたなんて……

人違いですよ、なんていうのももうばかみたいだ。


「ごめんなさい、確かに男なんだけど、絢香って名字だからつい……」


ごにょごにょ、と言葉を濁す。