綾香は、気づいてるんだ。
私と夕月さんが本当の兄妹じゃないってことに……
綾香の瞳を食い入るように見つめても、綾香が一体何を考えているのかなんてことは、読めない。
私が警戒しているのに気づいたらしい綾香は、私を安心させようと笑った。
「だいじょぶ、俺は誰にも言わないし、これを利用して脅したりなんかもしないから」
「……ほんとに?」
「本当。嫌われたくないしね」
いつかに似た言葉を残して、また綾香は歩きだした。
なんか……ちょっと焦ったりして損した気分。
そういえば綾香はそういうことするような奴じゃないし、なんか悪いな……
太陽の光が空から降ってくる。
公園中の木に分散している蝉たちがうるさいくらいに鳴いてる。
まるで、私たちを追いたてるみたいに。
「でもね」
公園を出たところで、綾香が前を向いたまま言った。
景色を見ながら歩いていた私は、綾香の声に前を向く。
「わかってると思うけど、俺は諦めないからね?」
そう言って少しだけ振り返ると、ちょっと舌を出してからまた前を向いた。
「………」
何でか赤くなる自分の頬に、綾香からは見えないのをいいことに両手をあてて口をマヌケに開いたまま閉じれなかった。