綾香はそんな私の様子をしばらく眺めてから、ぷっと笑って手すりから体を離した。
「しょうがないな、送って行ってやるよ」
「え」
ぽかんとしている私を追い抜き、私がついてきていないのを感じたのか途中で振り返った。
「何間抜け面してんの。おいで、こっち」
手招きされて、綾香の背中を追った。
「おいでって…私の家知ってるの?」
「知ってる。木原の友達はいいスパイなんだよね」
私の友達って……
莉沙――!!
お前か―――!!
昨日いきなり家に遊びに来たいなんて言い出したのは、このためだったのね!
私の頭の中で、にやりと笑う莉沙の顔が見えた気がした。
「今までにもいろいろ教えてくれたよ。好きな食べ物とか、方向音痴なこと…は知ってたけど」
勝手に人の情報流してる莉沙を恨む。
あとで何と言って責めようか……
「あと、夏休みに入ってから夕月さんっていうお兄さんと暮らし始めたこととか」
綾香が振り返って不敵に笑った。
「それが一昨日のあいつだろ?ま、俺にはお兄さんって感じには全然見えなかったけど」
私は足を止めた。
微笑む綾香の目を凝視してごくり、と唾を飲んだ。



