なんて街を眺めながらぼんやり考えていると、何か温かくて柔らかいものが私の頬に触れて、そっと離れていった。
「…なっ」
頬を押さえて綾香を振り返った。
「何するの!」
綾香はしれっとした態度で手すりに寄り掛かっている。
足を踏んづけてやりたい衝動にかられたけど、ぐっとこらえた。
「キスはしないって、言ったじゃん」
「キスじゃない。ほっぺにちゅー」
「~~~っ」
綾香は自分のほっぺたを人差し指でツンとつつきながら言った。
だめだ、完璧に綾香のペース。
あ、それは出会ったときからすでにそうだったか。
「帰る!」
私は綾香をむっと睨んでから背中を向けた。
それなのに、綾香はのんびりとした調子。
「止めないよ。どうせ、帰り道わからないと思うし」
「………」
そういえばそうだったと、がくりとしながら足を止めた。
自分の方向音痴を呪いたい!
ここから一人で帰るなんてとんでもない、絶対迷子になるに決まってる……
ていうか、ココドコ…??



