ない、とは続けずに、私は首を振った。
「第一、夕月さんからこんなの贈られたことないし!これからもきっとないよ」
「ごめん」
「なんで謝るの」
「なんとなく」
綾香はうつ向く私の頬に優しく手をあてて、顔をあげさせた。
黒い瞳が私をじっと見つめて、柔らかく細められる。
「可愛いな」
言われ慣れない言葉に、私はかぁっと顔を赤くした。
さらっと言っちゃう綾香にも恥ずかしい。
「で、普通はここでキスするところなんだけど」
綾香は私の頬に片手をあてたままそう言って、私は眉を下げた。
「…綾香の普通は私にとって普通じゃない気がする」
「わかってるって」
綾香はにこっと笑った。
風が彼の髪を揺らしていく。
「……けど」
手を繋ぐのくらいは許して、と言われた。
なぜか断れなかった私は、綾香が私の手をとるのを許した。
そして、そのまま歩きだす綾香。
手を繋いでいるから、大人しくついていくしかない。
「どこ行くの?」
綾香を見上げながら尋ねた私に、綾香は口元に人差し指をあててにっと笑った。
「いいところ」
あ、綾香の言ういいところって……
疑問が浮かんだが、綾香に手を引っ張られるのに任せてついていった。



